便利さが人間から奪うもの

今回は少し趣向を変え、便利さについてお話しします。
以前、経営者の集まりでお酒を飲んでいたとき、造園関係の会社を営んでいる社長が、こんな話をしてくれました。
「最近は便利になって、現場で困ったことが起きると、携帯で写真を送ってきて、社長の私に判断をあおぐのですよ。以前は現場の人間が判断していたのにね。便利になると、人間は考えることをしなくなるんですかね」。

私は、この話に強い関心を持ちました。
そういえば、と思うことが私にもあったからです。身近な例で言えば、パソコンを使うようになって、手書きで文章を書かなくなり、漢字を思い出せなくなりました。そのため、手書きで手紙を書くときは、いつも時間がかかります。経理で例えるなら、以前はそろばんで計算していたものが電卓へと代わり、今では、数字を入力するだけで、コンピューターが自動的に集計してくれるようになりました。もう、以前のそろばんに戻ることはできません。

そもそも便利とは、人間が頭や手を使って行っていた作業を、機械が代わりにしてくれることです。そのおかげで、1時間かかっていた作業が10分で行えるようになります。それが便利さの恩恵というものです。その一方、使わなくなった能力は衰えていきます。便利になることで、人は能力を使う機会を失い、そして失っていくのです。

便利になって、生活はゆとりのあるものになったのでしょうか? いいえ。むしろ忙しくなっています。長時間労働や過労死が問題視されるほど、時間にゆとりがありません。

社長は続けてこう話しました。
「便利になったおかげで、社員はメールを送るという手間を増やし、私からの判断を待つようになりました。私は私で、判断することが増えましたよ。 昔のほうがラクで良かった」。

何気ない会話でしたが、便利さの抱える問題点を垣間見た気がしました。便利さとは何なのか。今一度考えてみるのもいいかもしれません。

 

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