マナーの悪さは「人間性の問題」か、それとも「行為の問題」か

父は私が幼い頃、フランス料理店を営んでいました。そのため、レストランでの出来事をたびたび聞かされたものです。その中でも印象的だった話があります。マナーの悪い客への対応です。父が言うには、出前を注文する客や大声で歌い始める客などがいたそうです。そんな困った時、いつも頼りになったのがチーフです。機転の利いた対応に、いつも助けられていたそうです。

大声で歌い始めたお客がいた時の話です。父は、他のお客に迷惑なので帰ってもらおうとしました。チーフはそれを止め、「まぁ、見ていてください」と言い、歌っているお客へ行きこう告げたのです。「素晴らしいお歌ですね。嬉しいことがおありだったのでしょうね。このままお聞きしたいところではありますが、ほかのお客様もいらっしゃいますので……」と。お客は「おお、そうか」と言って周りを見渡し、歌うのを止めたのです。

チーフはお客の服装から「お祝い事の帰り」と見て、上機嫌なところにお酒が入り歌い出したと判断したのです。そこでお客の機嫌と面子を保ちつつ、歌うことを止めるように伝えました。正確に言えば、機嫌と面子を潰さない伝え方をしたからこそ、素直に歌うことを止めてくれたのです。

マナーの悪い客への対応策はいくつかあります。
ざっくり分類すると

・お客を不快にさせてマナー違反を止めさせる(下策)
・お客を不快にさせずマナー違反を止めさせる(中策)
・お客を良い気分にさせてマナー違反を止めさせる(上策)

マナーの悪い客を、「人間性の問題」あるいは「行為の問題」と捉えるかによって、講じる策は大きく変わってきます。もし、そのお客の「人間性の問題」と捉えてしまうと、いまさら教育を施すのは無理だと思い、「追い出す」という下策に出てしまいます。後は、どう追い出すかの問題です。

一方、「行為の問題」と捉えれば、対応策の幅が広がります。先のチーフのように、お客の機嫌や面子を保ちつつ、マナーの悪い行為を止めることもできるでしょう。さらに言えば、良い気分にさせてマナーの悪い行為を止めさせることもできます。

ここで一つ、私の好きなゴミのポイ捨てを激減させた話を紹介します。
アメリカのある町では、各所にゴミ箱があるにも関わらず、ポイ捨てが多く困っていました。ポイ捨てを減らすために講じられた策が「ゴミ箱の形をバスケットゴールに変える」です。これにより、道行く人たちが楽しみながらゴミ箱(ゴール)にゴミを捨てる(シュート)するようになり、ゴミのポイ捨てが激減したのです。住民をいい気分にさせながら問題解決した好例です。

 

先にも述べたように、対応策には

・お客を不快にさせてマナー違反を止めさせる(下策)
・お客を不快にさせずマナー違反を止めさせる(中策)
・お客を良い気分にさせてマナー違反を止めさせる(上策)
があります。

ネットでよく見かける「マナーの悪い客に正論ぶつけて黙らせてやった」みたいな記事に共感が集まっているのを見ると悲しくなります。もちろん、お店側に正当性はあるのですが、対応のレベルが低いのです。マナーの悪い客を「人間性の問題」と捉えているから、正論で説き伏せる、追い出す、という下策に出てしまうのでしょう。

もちろん状況によっては、下策を講じなくてはいけない場合もあります。だからと言って、「してやったぜ、えっへん」と思っているようでは、程度が知れているのです。

私が性善説で考える所為もあるでしょうが、大抵の人は「この店でマナーの悪いことをしてやるぜ」と考えて、入店する人はいないと思います(稀にいるかもしれないけれど)。誰でも、マナー良く振舞いたいと考えているはずです。マナーの悪い客は、大抵「マナーの悪いことをしている」という自覚がないか、「これぐらいならマナー違反じゃないかな」と基準を誤っているかです。
ですから、ほとんどの問題は「人間性の問題」ではなく「行為の問題」になります。相手の顔を潰さずに伝えることができれば、大抵は聞き入れてくれます。

「客が悪い」と言って終わらせてしまえば、成長の機会を失います。マナーの悪い“行為”を減らすために何かいい方法はないか。行為があった時の対策をどうすればいいのか。こうしたことを考えるのが商人の仕事であり、成長の機会だと私は思うのです。

 

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