漫画『君たちはどう生きるか』から紐解く「大衆の気分」

漫画『君たちはどう生きるか』が発売3ヶ月で100万部を超えるミリオンセラーになっています。30年以上も前に出版された書籍のリバイバル版が、なぜ今頃になって再び流行ったのでしょうか。 ただの一過性なのか、それとも消費者のトレンドの変化を表わしているのか。気になるところです。

この点について、漫画『君たちはどう生きるか』に関わったコルク代表の佐渡島庸平氏が2018年1月1日の日経MJ(5面)の取材でこう答えていました。

「現代は人が触れる情報量が多くなりすぎました。何を手に取ればいいのか、みんな分からなくなって、売れているものが加速的に売れる時代だと思います」(中略)
「自分たちが本当に面白いと感じるものをつくろうとすると、少ない人数ですが『この10年で一番良い』という大絶賛の人が出てきて、売れるようになります」

 

似たコメントをアニメ『けものフレンズ』監督のたつき氏が同紙面にコメントしています。

「ニッチかもしれないけど自分と同じ感性の人たちが本当に欲しいものをつくろうと、自分自身が見たいものを小細工せずつくったら、そういう人たちが強烈に推してくれたんです。けものフレンズは視聴者100人のうち1人に刺さる作品というイメージで、多分人気が出た後もこの確率は変わっていない。ただ、ネットで話題が広がるにつれて分母が大きくなり、たくさんのニッチな方が見てくれた結果のヒットだと思います」

 

紙面は変わり(1面)、私の感性マーケティングの師匠でもある黒川伊保子氏の記事が掲載されていました。狙っての記事なのかは分かりませんが、先ほどの2名のコメントを脳科学の見地から裏付ける内容になっています。

「大衆の気分は56年1サイクルで変わる」と話すのは、人工知能研究などを経て感性分析の第一人者として活躍する黒川伊保子さん。ポスト平成は「『私だけの特別なもの』を愛する時代は終わり、本物にあこがれる時代に移る」と言う。(中略)
1980年代後半以降日本の消費は後退へと向かい、「いいモノをつくるだけじゃだめ。消費者を見よ」と言われ続けてきた。
しかし「この流れのピークは2013年。例えばアッパーブランドのように『プロが一途に作ったもの』とか、皆があこがれるものを求める傾向が少しずつ強まってきている」と黒川さん。(中略)
こうした中で黒川さんが提唱するのは「上から目線」の消費者とのコミュニケーションだ。

 

“大衆の気分”をもう少し分かりやすく言えば、「いつかはクラウン」と言っていた時代、つまり、“大衆が同じものに憧れる(求める)時代”になるということです。企業が「これが本物」と言い、それを一部の消費者が評価したら、後は周りの反応を見て大半の消費者が動き出すのです。

情報過多の時代、何がよいものかを自分で見極めるのは大変な労力です。それよりは、「本物と評価されているなら、それを買っておかないとね」という流れになっていくわけです。

漫画『君たちはどう生きるか』は、過去にも売れた名著であり、いわゆる「本物」の書籍です。本書を時代に合わせて読みやすい形(漫画)に変えてリリースしたところヒットしたわけですが、その背景には黒川氏の言う“大衆の気分”の変化が大きく関与していたのかもしれませんね。もし、黒川氏が言うように大衆の気分に変化が起きているのであれば、今後も名著のリバイバル版が流行るはずです。

それは何も出版業界に限った話ではありません。映画業界やアニメ業界でも同様の事象が起きるはずです。出版、映画、アニメ業界は、大衆の気分の動きを見るのに適していると個人的には思っています。

最近のヒット作品を見てみましょう。2016年には、映画「シン・ゴジラ」が80億円を売り上げるヒット作になりました。アニメ映画では、2017年に『宇宙戦艦ヤマト2202』が公開されましたが不振に終わっています。チョイスが悪いです。

私が個人的に期待しているのが、2018年4月放映予定の『銀河英雄伝説』、2019年4月放映予定の『ファーストガンダム』のリメイク版です(実はめっちゃ楽しみ)。

当然、名作なら何でも売れるわけではありません。時代背景を鑑み、どの作品を選ぶか、どんなリメイクを施すのかも重要です。

偏った業界で解説をしましたが、論旨は「今後は、100人中1人が絶対に喜ぶ商品であると企業が自信を持って提供できる商品がヒットする」です。多数の満足よりも、少数の大満足を狙った商品が結果的にヒットする時代に入りつつあるのです。

 

 

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