セールスマンは、断ることを覚えなさい

セールス関連の書籍を読んでいると、時々目にする話があります。
それは、セールスマンが商談中、「もし、ご契約をご検討されないのであれば、これで帰りますが……」と言い放ち、資料などを鞄に入れ、席を立つ。帰ろうとした瞬間、商談相手から「ちょっと待ってくれ」と止められ、商談が成立する。というような話。
でき過ぎた話に聞こえるかも知れせんが、実はこれ、まんざら嘘ではありません。私も何度か経験してきました。

私の経験談をお話しします。
私がセールスマンをしていた頃、ある営業先から一本の電話が入りました。「正式に検討したいから、すぐに社まで来てくれ」と。

翌日、新幹線とJRを乗り継ぎ、長野から武蔵野まで足を運びました。営業先の社長と面談をして、商品について改めて説明をしました。商談も佳境に入り、カタログを見せて商品を選んでもらう段階へ。社長はカタログを見て、おもむろにこう言いました。「で、いくら安くなるの?」。

私は一息置き、「当社は値引き販売していないのです。申し訳ありません」とお伝えしました。社長は怪訝な顔をしながら、「そんなことはないでしょ。もうね、変な駆け引きしなくていいからさ。いくら安くなるのか教えてよ」と、さらに価格交渉してきたのです。

私は続けて「いや、本当に値引き販売していないのです。会社からも『値引きするなら売ってくるな』と言われていますし」と答えました。社長はさらに怪訝な面持ちになり、少しイライラした調子で、「少し安くしてくれるなら、一番高い機種を買うよ。これでどうだ」とさらに交渉してきたのです。

私は「値引きは本当にできません。もし、値引きがなければご契約していただけないのであれば、これで失礼します」と答え、帰り支度を始めました。書類をすべて鞄に入れ終え、「では、失礼します」と挨拶をして席を立ちました。その瞬間、「おいおいおい、本気なのか。もうわかった。わかったよ。定価で買うよ」と社長は面食らった顔をして私を引きとめたのです。

腰をもう一度下ろした私は、「あ、そうですか。ありがとうございます。一番高い機種でしたっけ。では、ここにサインをお願いします」と言い、契約書を鞄から取り出して社長の前に差し出しました。社長は苦笑いをしながら、言われるままにサイン。

契約後の雑談中、社長は「おたくのようなセールスマンは初めて見た。あれ、ああいう交渉術かなんかなの? どちらにしろ、君のセールスには感心したよ。うちのセールスマンやらない?」と冗談交じりに褒めていただきました。

私のとった行動、「値引きを求めるなら帰ります」は、交渉術でもなんでもありません。私自身、交渉術として使っている意識は全くありませんでした。あの時、本気で帰ろうとしていたのです。

というのは、当時の私は、セールスを打率計算していました。「自分の打率は、だいたい○割」と計測しており、最も売り上げを上げる方法は、「打率を上げること」ではなく、「訪問件数を増やすこと」だと思っていたのです。そのため、見込みのないお客様はさっさと切り、次のお客様に周るほうが成果は出ると結論付けていました。そうした背景があったため、私は躊躇せずに商談を打ち切れたのです。それが結果として交渉術としての役割を担い、成約率を上げていたのでした。

最後に、交渉術について自説を述べておきます。
交渉は、交渉しない人のほうが強いです。「この商談が破談になっても別に困らない」と思っている人が最後に勝ちます。というより、この人には「負け」がありません。

交渉は、優位な立場にある側が有利になりやすいものです。最も優位な側とは、「失うことが怖くない」と思っている側なのです。もう相手側が折れるしかありません。つまり、「失うことが怖くない」という状況や考え方を持つのは、最も効果的な交渉術です。「術」というよりも「戦略」に近いですね。交渉されても交渉の土俵に上がらない人が、交渉では勝つのです。

 

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