ブライダル業界の事例に見る、顧客中心マーケティング

起業したばかりの頃、一本の電話相談が入りました。相談者は、ブライダル業界に従事している方からです。

その方は私に、このような相談をしました。
「今、ブライダル業界は斜陽産業です。若い人の人口減と結婚式を挙げる人の減少、そして、安価なブライダルプランまで出てきて、市場・利幅ともに減少傾向にあります。どうしたら生き残れるでしょうか?」と。

私は二つの質問をしました。
一つ目の質問がこれです。「ところでお聞きしたいのですが、御社で結婚式を挙げたお客様に、その後、何か売っていますか?」と。お返事はNOでした。

なぜこのような質問をしたのか。この質問には意図があります。
それは、「あなたたちは、その後もお金を払ってくれるお客様をみすみす手放している」という点に気づいてほしかったからです。

ブライダル業界は、私から見てとても美味しい業界です。
なぜなら、お客様の結婚記念日の情報が必然的に手に入るからです。また、その結婚式を挙げた会場や場所に、お客様は少なからず思い入れが残ります。これはとても希有かつ貴重な事業資源です。

もし私がブライダル業界にいるなら、この資源を最大限活用します。定期的にフォローを続け、結婚一周年目には以下のような手紙を出すでしょう。

「昨年は、弊社で挙式して頂き、誠にありがとうございます。あの日のことは、昨日のように覚えています。とても感動的な素晴らしい挙式でした。来月の○日には、一周年記念日になりますね。
もし、よろしければ、思い出の場所で特別ディナーを召しあがってみてはいかがでしょうか。弊社では、挙式して下さった方に、特別なディナーと催しを用意しております。また、新婦様向けのプレゼントやサプライズもご用意することができます。
ぜひ、挙式をした思い出の場所で、新しい二人の記念を作ってみてはいかがでしょうか?」。

 

私が伝えたかった意図はこうです。
「事業資源を活かせば、結婚式以外のものも売ることができるよ」。

本当にそんなことが可能なのか、と首を傾げる方もいるでしょう。相談者も始めは懐疑的でした。それもそのはずです。これは従来のマーケティングとは全く違う考え方だからです。
私が提唱したのは、お客様の人生の歩みを軸にした、新しいマーケティングの考え方です。私はこれを顧客中心マーケティングと呼んでいます。

おそらく、他のコンサルタントに相談すれば、企業の強みを明確にして他社との差別化を図り、集客媒体にテコ入れして、集客アップを目指すでしょう。それも正解です。間違ってはいません。ただそれは、商品を軸にした従来のマーケティングの考え方なのです。

相談日から約1年した頃、日経MJでこんな記事が掲載されていました。

「京王プラザホテル(東京・新宿)は3月、結婚を挙げた夫婦を対象にした新しい会員組織を発足する。優待クーポン券の提供や宿泊料の30~50%の割引などの特典が受けられる。(中略)結婚式をしたホテルを再訪したい夫婦が多いと判断、会員組織を新設して将来的な顧客に育てていく狙い。(中略)誕生月や結婚記念月にレストランで特別メニューが割安で食べられるなどの特典を付けた」(日経MJ2010年2月10日)

 

私が相談者に伝えた内容を、京王プラザホテルが実施したのです。京王プラザホテルは自社が抱えている経営資源に気づいたのでしょう。こうしたマーケティングの方針転換は、徐々に目にするようなってきました。

さて、相談者にした二つ目の質問をご紹介します。
私は次のように質問しました。「挙式をする人は、挙式をする前に、何にお金を払っていますか?」

もちろんこの質問にも意図があります。
私が伝えたかったのは、「自社のサービスを購入する前にお客様を掴め」ということです。そしてこうも付言しました。 「ブライダル業界は、婚活事業をするべき。もし事業ができないのであれば、婚活事業者と提携するべきです」と。

前回の質問の意図は、挙式を挙げた“後”に何か売れないか、というものの見方に気づかせるものでした。今回は、挙式を挙げる“前”に何か売れないか、というものの見方に気づかせるものです。これも、お客様の人生の歩みを軸にしたマーケティングの考え方です。

そして、今年(2014年)の日経MJにこんな記事が掲載されていました。

「結婚式運営のテイクアンドグヴ・ニーズ(T&G)は結婚相談所大手のIBJと提携し、出会いから挙式までをトータルでサポートする。IBJ直営の相談所の会員で結婚を決めた顧客に対し、T&Gの結婚式場を紹介してもらう。ブライダル業界が縮小傾向にある中、消費者との接点を増やすことで収益を向上させる」。(日経MJ2014年4月24日)

 

お客様の人生の歩みを軸にしてマーケティングを組み立てる。私は7年ほど前(2007年頃)から、顧客中心マーケティングを取り入れる企業は今後増えてくると予測していました。いくつか理由はありますが、今回は割愛します。

ただ一つ言えることは、顧客中心マーケティングは、時代や国柄の影響を一切受けない普遍的なものだということです。

なぜなら、顧客中心マーケティングは、商売の大原則に則っているからです。その大原則とは、「商売とは、欲しがっているもの(顕在欲求)、欲しがるもの(潜在欲求)を売ることである」。お客様が婚活をしたいなら、婚活サービスを。結婚式を挙げる時になったら、ブライダルサービスを提供すればいいのです。

話は戻ります。
相談者は1時間ほど私の話を聞いて、はたと気づきました。今まで自分本位でマーケティングを考えていたことに。

自分たちが「何を売るのか」「何を売りたいのか」ではなく、お客様が「何を欲しがっているのか」「何を欲しがるのか」。そう考えたとき、業界の垣根を超えたマーケティングや商品開発が可能になります。その賜物として、お客様との縁が切れない商売ができるようになるのです。

従来のマーケティングであれば、「ブライダルが売れたら終わり」でした。顧客中心のマーケティングであれば、「ブライダル前から付き合え、ブライダル後も付き合える」そんな商売に転換できるのです。これが、私の提唱する顧客中心マーケティングの真髄です。

 

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