仕事の質を高めたければ、締め切りを設けなさい

あなたは、仕事に締め切りを設けていますか。
たとえば、上司やクライアントから「手が空いたときでいいよ」と言われた仕事に対して、自ら「○○日に終わらせます」と宣言する。このように、締め切りを常に意識して仕事に取り組んでいる人はどれほどいるでしょうか。これは“時間術”の話ではありません。仕事の質を高める“仕事術”の話です。

私は制作業務を受注した際、クライアントに「締め切りはありますか?」と訊ねます。「2週間後には欲しい」という方もいれば、「手が空いているときでいいです」という方もいます。後者は、締め切りがありません。そんな場合でも、「○日から着手できるので、2週間後の○日を納品目標にしますね」と自ら締め切りを設けるようにしています。なぜなら、私の場合、締め切りを設けないと延々と着手しないからです。それに、締め切りを設けたほうが仕事のスピードが速くなることを経験上知っています。締め切りを設けることによって、仕事のスピードが速くなるのは、何も私だけではないはずです。

私も外部の人に仕事をお願いすることがあります。特に急ぎではない場合、ついつい私も「手が空いているときにでもお願いします」と言ってしまいます。その時、受けた人間がもし自ら締め切りを設けない場合、十中八九1ヶ月経っても仕事に着手してくれません。3ヶ月経っても着手しない場合もあります。さすがに私も、「忘れているのではないか?」と不安になり、「どうなっていますか?」と催促してしまいます(これは、締め切りを設けない私も悪いです)。

依頼する側になって考えてください。
「急ぎではないので、いつもでいいですよ」とお願いした仕事に対して、一ヶ月経っても着手しない人。一方、「○日までにします」と自ら締め切りを設けて着手する人。後者のほうが信頼できますよね。自ら締め切りを設けるだけで、信頼が得られ、なおかつ、仕事も早く仕上がる。仕事ができる人と評価されるのは自然な成り行きです。

締め切りを自ら設けて損することはありません。むしろ、設けないほうが信用を損なうリスクを有しています。ぜひ、“いつでもいい仕事“を“いつまでにする仕事”にして取り組んでください。

とりわけクリエイティブな仕事に従事している人は、積極的に締め切りを設けてください。「えっ、クリエイティブな仕事って時間をかけたほうがいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、それは間違いです。最低限の時間は必要ですが、時間が多ければ多いほど質の高い作品ができるわけではありません。往々にして、余剰な時間はクリエイティビティを下げてしまいます。

この話は、日本を代表するデザイナーの著書『佐藤オオキのスピード仕事術』(著者 佐藤 オオキ)にも記されているので引用します。

デザインやブランディングの仕事とスピードは、最も関係がないように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
実際にスピードを重視すると、不思議なほど仕事の質が高まります。しかも予定よりも早く仕事を仕上げると関係者にも喜んでいただけるため、依頼がどんどん増えてきます。
すると手がける仕事の幅が広がっていくので、ますます経験値が上がっていきます。そして、さらにスピードもアップして、自分も成長していくーという、驚くような正のスパイラルが起きるのです。
(中略)
私は、実際の納期より早く締め切りを設定して仕事を進めるようにしています。たとえば3週間後が納期なら、まず「1週間で仕上げる」と目標を設定するのです。
このように目標を決めると、自ずと「1週間で仕上げるにはどうしたらいいか」と考えるようになります。よりスピードを上げる方法を工夫することで、実際には1週間で仕上げられなかったとしても、2週間あれば余裕をもって仕上げられるようになるといった成果が得られます。
この場合、目標は「かなり無理がある」と思えるような水準で設定するのがポイントです。たとえば「3週間ですら厳しい」という状態で「1週間で」という目標を決めれば、当然、極端な負荷をかけて仕事に取り組むことになるでしょう。そのような状態を何度か経験すると、それまで重いと感じていた負荷も、あまり重く感じなくなるのが面白いところです。

 

言語脳学者の酒井邦嘉氏と指揮者の曽我大介氏との対談を記した書籍『芸術を創る脳』からも紹介したい一文があります。

曽我 私の座右の銘は、「締め切りが芸術を創る」です(笑)。だって締め切りが来ないと、いつまでたってもやらないものでしょう。だからベートーヴェンだって、自分で演奏会を催さないといけなかったのだと思います。依頼原稿だってそうですし、画家にしても、展覧会をやるから、それまでに描かなければとキャンパスに向かうのでしょう。

酒井 締め切り以外にも、様々な制約が芸術を創るということはあるでしょうね。「自由になんでもいいですよ」と言われると、かえって力を発揮しにくいものです。「この制約でやってください」と言われたとき、その枠の中で最大限どこまでやれるか、というチャレンジ精神が創作力を引き出すのかもしれません。

漫画界の神様 手塚 治虫は、連載をいくつも抱え、日々締め切りと戦っていたそうです。もしかしたら、手塚治虫を天才へと開花させ、多くの作品を世に残させたのは「締め切り」なのもしれませんね。

仕事の質や能力の向上に寄与する「締め切り」。この手法を使わないのはあまりにももったいないです。クリエイティブな仕事に限らず、どんな仕事でも締め切りを設けて挑んでみてはいかかでしょうか。

 

 

関連書籍


芸術を創る脳

 


佐藤オオキのスピード仕事術

 

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